第3章 小児に良く見られる症状

(C) 医療研修推進財団

発疹性疾患


〔救急でよくみる発疹性疾患〕   〔ウイルス性の発疹症〕
〔細菌性の発疹症〕   〔非感染性の発疹〕
〔急性の紫斑〕   〔参考文献〕



救急でよくみる発疹性疾患
   は、発熱を伴う頻度が高いもの は、解熱後発疹を伴うことがあるもの
紅斑(+丘疹)

感染麻疹風疹突発性発疹伝染性紅斑溶連菌感染症エンテロウイルスツツガムシ病・ライム病・ブドウ球菌毒素による発疹

自己免疫・膠原病川崎病SLEJRAリウマチ熱
アレルギー他蕁麻疹薬疹固定薬疹多型滲出性紅斑

丘疹 皮膚カンジダ症・Gianotti病
水疱 水痘・帯状疱疹・口唇ヘルペス・手足口病カポジ水痘様発疹症
水疱・びらん 伝染性膿痂疹SSSS・熱傷
紫斑 アレルギー性紫斑病(HSP)・血小板減少性紫斑病・白血病・啼泣や激しい運動に伴う紫斑・虐待

急性発疹症における情報収集 急性発疹症の大まかな鑑別 
ウイルス性の発疹症  細菌性の発疹症  非感染性の発疹(自己免疫・膠原病・アレルギー)


○急性発疹症における情報収集
  随伴症状(発熱、リンパ節腫脹、眼球結膜充血)、流行の有無、発疹出現前の状態(投与薬や摂取した食事)
   
○急性発疹症の大まかな鑑別
  急性の発疹
 →@感染 A血管炎 Bアレルギー
  急性の紫斑
 →@血液腫瘍性 A血管性疾患(HSP含む)B凝固異常 C虐待 D啼泣や運動に伴うもの

ページトップへ戻る 先頭へ戻る

 



ウイルス性の発疹性

麻疹 measles
麻疹ウイルスによる。春に流行。感染力が強い(空気感染)
潜伏期:10〜18日
症状:強い呼吸器症状・倦怠感・高熱→一度微熱→高熱・発疹→解熱・色素沈着
(二峰性発熱)
発疹出現前に頬粘膜にコプリック斑
発疹の特徴
 数mm〜1Cm程度の紅斑(性丘疹)→融合
 耳後部・頸部・頬部→体幹・四肢
 紅色→暗赤色→褐色の色素沈着
 
診断:コプリック出現以降、臨床診断可能、麻疹IgM陽性
合併症:肺炎・脳炎・SSPE(1/10万)など
治療:対症療法・細菌感染合併予防と治療
 生ワクチンで予防可
 
クリックで拡大します
うえじま小児科上島亮先生のご好意による
ページトップへ戻る 先頭へ戻る

 

風疹 rubella
風疹ウイルスによる。春に流行。飛沫感染
潜伏期:14〜21日
症状:発熱(微熱)と非融合性の発疹、リンパ節腫大
発疹の特徴
 数mmの小紅斑で均一。あまり融合しない
 顔面→体幹・四肢 と急速に移行
 色素沈着を残さず、数日で消退
診断:非流行期の臨床診断は不可。風疹IgM陽性
合併症:先天性風疹症候群(妊娠初期の罹患では半数以上)、関節炎(成人の5-30%)、
まれに血小板減少性紫斑病、脳炎
治療:対症療法
 生ワクチンで予防可
 
クリックで拡大します
うえじま小児科上島亮先生のご好意による
ページトップへ戻る 先頭へ戻る

 

水痘 varicella, chicken pox
水痘帯状疱疹ウイルスによる。冬〜春に流行。感染力が強い(空気感染)
潜伏期:10〜21日
症状:掻痒感の強い水疱と発熱

発疹の特徴
 浮腫性紅斑→紅暈を伴う水疱→痂皮(各段階が混在)
 頭・体幹・顔に多い

診断:臨床診断(初期以外)可能。水痘IgM陽性
合併症:皮膚溶連菌感染・まれに肝炎、脳炎、肺炎
治療:対症療法
 アシクロビル(ゾビラックスR )80mg/kg/day(〜3.2g/day)、分4、5日間内服
 フェノール亜鉛化リニメント(カチリR)を水疱1つずつに塗布
 解熱剤としてアスピリンは禁忌(ライ症候群のリスク)
 生ワクチンで予防可
 
クリックで拡大します
うえじま小児科上島亮先生のご好意による
ページトップへ戻る 先頭へ戻る

 

突発性発疹 exanthem subitum
ヒトヘルペスウイルス6型、7型による。エンテロウイルスでも同様の症状が起こりうる 
潜伏期:不明。母体唾液からの水平感染といわれている
症状:乳児の1〜4日続く高熱(胃腸症状、大泉門膨瘤を伴うことあり)
 永山斑(口蓋垂の根元に存在する数個の小結節性隆起)
 →解熱後(あるいは高熱期の最後)から発疹
発疹の特徴
 数mmの小紅斑で均一(風疹様)、あるいは融合性の斑状丘疹(麻疹様)
 体幹→顔面・四肢 
 色素沈着を残さず、数日で消退。
合併症:熱性痙攣・脳症・四肢麻痺・肝炎など
治療:対症療法
   
ページトップへ戻る 先頭へ戻る

 

手足口病 hand, foot and mouth disease (syndrome)
原因:コクサッキーA16、エンテロウイルス71、その他のエンテロウイルス。夏に流行
潜伏期:数日
症状:手掌・足底・口腔粘膜に水疱・紅斑性丘疹、咽頭痛、発熱
発疹の特徴
 手掌・足底・口腔粘膜以外に、手背・足背・臀部・指などにも水疱・紅斑性丘疹
 手掌・足底の水疱は、指紋の方向に長軸が一致
 年長児では水疱より丘疹の方が多い
 数日〜2週間程度で治癒
エンテロウイルス71の手足口病は、その他の手足口病に比し、高熱・痙攣・髄膜炎・脳症など重症化する頻度が高い
治療:対症療法
   
ページトップへ戻る 先頭へ戻る

 

伝染性紅斑 erythema infectiousum
ヒトパルボウイルスB19による。いわゆるりんご病
潜伏期:14〜21日。発疹出現時には、すでに感染性がない
紅斑・感冒症状を伴うことあり 全身状態良好 
発疹の特徴
 顔面の両頬に紅斑→上腕・前腕伸側に網目・レース状の紅斑
 時に細かい紫斑が四肢末端を中心に出現("glove-and-socks"syndrome)
合併症:関節炎・紫斑病・脳炎・VAHS・骨髄抑制(aplastic crisis含む)
妊婦が罹患すると、胎児水腫の危険あり
治療:対症療法 
   
ページトップへ戻る 先頭へ戻る

 

カポジ水痘様発疹症 Kaposi's varicelliform eruption
原因:単純ヘルペスウイルス
症状:基礎にアトピー性皮膚炎のある小児で、高熱・水疱・所属リンパ節腫脹
発疹の特徴:
 アトピー性の湿疹上に、小水疱多発
 顔面に多い
治療:アシクロビル(ゾビラックスR )内服(30mg/kg/day、分4)か静注(15mg/kg/day、分3) 5〜7日間。皮膚管理
   
ページトップへ戻る 先頭へ戻る

 


細菌性の発疹性

溶連菌感染症 猩紅熱 scarlet fever
A群β溶連菌による
発熱・咽頭痛(舌苔→苺舌)→発疹・消化器症状
発疹の特徴 
 毛根に一致した粟粒大の点状紅斑とそれの融合(び慢性の発赤)
 頸部→全身へ(特に頸部・腋窩・会陰・肘窩・膝窩)、口囲蒼白
 肘窩・膝窩の線状発赤(Pastiaのサイン)・角化性丘疹(カサカサする)
診断:咽頭培養・咽頭迅速抗原
治療:AMPC(サワシリンR・パセトシンR) 20-40mg/kg/day(〜750mg/day)内服10日間+整腸剤。除菌に失敗する場合は、CFDN(セフゾンR)などの経口セフェム系を考慮。
   
ページトップへ戻る 先頭へ戻る

 

伝染性膿痂疹 impetigo
ブドウ球菌・A群β溶連菌など
汗をかく夏の乳幼児に多い
発疹の特徴
 紅斑上に水疱を形成し、掻いてびらん・痂皮が形成
 顔面→体幹・四肢
 水疱を作らない痂皮性膿痂疹はA群β溶連菌に多い
治療例:CFDN(セフゾンR)内服9-18mg/kg/day(〜300mg/day)内服、数日 
   
ページトップへ戻る 先頭へ戻る

 

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群 SSSS staphylococcal scalded skin syndrome
原因:黄色ブドウ球菌の外毒素による。咽頭などから黄色ブドウ球菌検出
新生児〜幼児に多い
症状:発熱・発疹(紅斑→びらん)
発疹の特徴:
 頸・腋窩・会陰→全身に、紅斑→水疱→剥離 
 ニコルスキー現象(皮膚をこすると表皮が剥離する) 
入院し、黄色ブドウ球菌に対する抗菌薬静注・輸液管理・皮膚管理
   
ページトップへ戻る 先頭へ戻る

 


非感染性の発疹(自己免疫・膠原病・アレルギー)

川崎病 mucocutaneous lymphnode syndrome
4歳以下に好発
発熱・頸部リンパ節腫脹・不定形発疹・眼球結膜充血・苺舌・
 指趾硬性浮腫(後に膜様落屑)を特徴とする原因不明の血管炎
 エルシニア感染症に類似
心臓、特に冠動脈病変(瘤・梗塞)が予後決定因子
発疹の特徴
 不定形発疹(麻疹、風疹・多型滲出性紅斑・中毒疹・蕁麻疹 などに似る)
 BCG接種部位の限局性紅斑(主にBCG接種後半年以内)
 急性期の指趾硬性浮腫→回復期の膜様落屑(爪の部分から皮が向ける)
検査所見:白血球増加・CRPや赤沈高値・心エコーで冠動脈拡大あるいは周囲の高輝度など。時に髄液細胞増多・白血球尿
治療:入院し、ガンマグロブリン大量・アスピリン(肝障害などではフロベンR)・ウリナスタチンなど
   
ページトップへ戻る 先頭へ戻る

 

蕁麻疹 uriticaria
原因:食事・薬剤・環境変化・感染などが関与
 例)動物性蛋白摂取後、数十分以内に発症(乳幼児で食事による場合)
発疹の特徴
 数時間以内の限局性の皮膚の浮腫。膨疹。全身どこでも
 掻痒感が強いが、掻くと膨疹が増大する
 境界明瞭、消失した後、また別の場所に出現
治療:抗アレルギー薬・抗ヒスタミン薬の内服。抗ヒスタミン薬の塗布
   
ページトップへ戻る 先頭へ戻る

 

薬疹・固定薬疹 (fixed) drug eruption
発疹の特徴
 丘疹性紅斑が多く、融合することもある
 薬物投与により同部位にできる円形の扁平な紅斑を固定薬疹という
診断:皮内試験(慎重に行う)、リンパ球刺激試験(DLST)など
治療:原因(と考えられる)薬剤の中止
 抗アレルギー薬・抗ヒスタミン薬の内服。抗ヒスタミン薬の塗布
   
ページトップへ戻る 先頭へ戻る

 

多型滲出性紅斑 erythema exsudativum multiforme
原因:感染(ヘルペス・マイコプラズマなど)・薬剤(抗菌薬・抗痙攣薬など)など
症状:発疹、発熱、軽い粘膜症状など 
発疹の特徴
 紅斑は、爪甲大円形、二重の輪郭、融合性
 肘・膝・手背・足背が多い 
 強い粘膜症状とびらん→スティーブンスジョンソン症候群
原因除去・抗アレルギー薬・抗ヒスタミン薬の内服。ステロイド薬の塗布
 ステロイドの全身投与が必要な場合もある
多型滲出性紅斑・スティーブンスジョンソン症候群・中毒性表皮壊死症は、分類が統一されていない。
   
ページトップへ戻る 先頭へ戻る

 


急性の紫斑

紫斑の鑑別 purpura
救急では、まず血小板数(できれば凝固系も)を採血
問診・視診:
 点状→血小板性・血管性・咳や啼泣などの運動によるもの
 関節・筋肉内出血→凝固異常
 下腿に多く、腹部症状や浮腫・関節症状を伴う→HSP(アレルギー性紫斑病)
 肝脾腫を伴う→血液腫瘍性疾患
 啼泣が強く、顔面に多い→啼泣によるもの
 咳が激しく、上胸部に多い→咳によるもの
 親の説明と一致しない場所→虐待
データ:
 血小板減少→血小板減少性紫斑病・白血病など
 血小板正常→HSPなど
   
ページトップへ戻る 先頭へ戻る

 



参考文献
(1) 絹巻宏、横田俊一郎:こどもの皮疹・口内咽頭所見チェックガイド、医学書院 2001
(2) Feigin RD, Cherry JD: Textbook of Pediatric Infectious Disease, 4th edn, W.B.Saunders, 1998.
   


〔救急でよくみる発疹性疾患〕 〔ウイルス性の発疹症〕
ページトップへ戻る 先頭へ戻る
〔細菌性の発疹症〕 〔非感染性の発疹〕
〔急性の紫斑〕 〔参考文献〕